幻のSXSW、日本館/放送内容要約

<JFNラジオ「FUTURES 落合陽一RADIO PIXIE DUST」> 今回は幻のSXSW、日本館についてお話します。

放送内容

3月に予定されていたサウス・バイ・サウスウエスト。日本館の統括ディレクターとして準備を進めていたが、新型コロナウィルスの影響で中止になった。その代わり、日本科学未来館から1日のパフォーマンスとして生中継配信をした。

本来実施するはずだった日本館とは?

プロジェクト名は、2019年同様「The New Japan Islands」。経済産業省の人たちと一緒に「0次産業革命」――「資本主義的な豊かさ以外の豊かさをどうやったら作れるか?」「まだ評価されていない日本の良いものを見つけに行こう。」「日本の美的価値観を新しいものにして対外的に発信しよう」――を意識的にやっているイベント。Cool Japanとは少し違い、民藝や発酵を扱う。題材自体は昔からあるもの。去年は「アメリカの人が間違えて入った日本料理店」のようなカッコよさにした。

今年は、日本民藝館の協力の元、民芸品を扱った。民藝と霊性ということをずっと考えている。柳宗悦が見つけた霊性的な価値観やその背景にある文化を理解した上で、あえて民藝の表面的なカッコよさにフィーチャーしながら考えていく。鈴木大拙の言う「日本的霊性」の霊性をどう捉えるかが重要だが、小難しく考えずにあえて「身体で感じる」。バイブスが合う、ビートを刻むのも霊性のひとつなのではと思い、ダンスミュージックで合わせたり8Kのプロジェクションで感覚的に立ち上がるものを探してみたりと、コントラストが効いて解像度の高いものを見ることによって、そこから現れてくるものを体感することに力を入れてやった。パフォーマンスと言うよりインスタレーションとして作ったが、今回は1日に圧縮したウェブ配信だったのでパフォーマンス的になった。

日本館全体のコンセプトは?

「ハイパー霊性 - 超感覚がめぐるところ Cycles of Hyper Intuition」。「民藝」という言葉にも色々な定義があるように、霊性にも色々な定義がある。その人が属するコンテクストによって感じるものが大きく異なる。「そのコンテクストを超越してそれをテクノロジーで見せたら、感じるものがあるんじゃないか?」と思い、NHKの8Kチームと、民芸品の表面をひたすら8Kで撮影して、立体感や表現の解像感を壁に8Kプロジェクターでプロジェクションした。映像と物質の垣根が8Kぐらいになると変わって感じてくる。

空間のコンセプトは?

霊性のたゆたう場所 Field of Divine Nature。通常はSpiritualityと訳される「霊性」を、Divine Nature(神性を感じるほどの自然)とした。一神教の神を想定するような宗教的な感じがするが、自然から得られる宗教的な感覚は僕の意図するところに近い。それを作るのに、パナソニック提供の細かい霧で、ふわっと光が漏れる。その上に8Kのプロジェクターを壁に打って、立体的なゴツゴツした縄文や弥生の棺桶・陶器・岩偶をプロジェクションすると、壁が生きているみたいに動く。その間にさらに霧が舞っていて「すやり霞」のようなものを登場させる。空間の設計も、鏡を貼ったり、しめ縄つくったりしたかったが、行く1週間前に中止になった。1週間で組み直し、さらにもう1週間かけて日本科学未来館で実現した。本当は一般の人にもっと立体的に見てほしかった。

関わったメンバーは?

VJ(Visual Jockey) 統括ディレクター 落合陽一
DJ(Disk Jockey) 水曜日のカンパネラ ケンモチヒデフミ
LJ(Lighting Jockey) クリエイティブ担当 遠藤治郎
MJ(Mist Jockey) ビジュアルデザイン担当 下浜臨太郎 等

ウィズコロナで起きた行動変容をどうビジネスにしていけるか、長期戦で考えよう

インスタレーションとトークのリモート。トークショーの映像配信は、比較的現場がなくても成立した。現場で作ったインスタレーションを映像で伝えるのは厳しい。世界的なコロナの影響で様々なイベントが中止になっている。「どうすれば世界をもう一度再び繋げられるか?」が裏テーマにあった。コロナウィルスに向かい合う対策マニュアルやハザードマップを作り、現場できっちり実践した。今まで経験しなかった興味深い体験だった。しばらくはウィズコロナ。対策し今の状況下を乗り切る必要がある。ライブやイベントのあり方も変わる。

例えば、VRゴーグルを使うイベントではよく、皮脂がつかないようによく「ニンジャマスク」を付ける。同様に、自分が喋らない系の展示――講演会・ライブ・イベント・展覧会・美術館・映画館――では、ビニール手袋・マスクを配布されるようになるはず。一方、マスクをしていてはしづらい行為(例:肩を寄せ合って歌う、ライブで叫ぶ、スポーツの応援)のスタイルは変わっていくだろう。密集しやすい場所(例:カラオケ、バー)の過ごし方、旅行も変わるだろう。自粛で様々な行動変容が起きている。保証も必要。かつ、変容された行動を受けつつ新しい価値・新しい習慣に対して、どうすればビジネスにしていけるかを考えていかなければいけない時期。

ワクチンや特効薬の治験は進んでいるものの、集団免疫を獲得するには長いプロセスが必要。ウィズコロナをどう生きるかを長期戦で考える必要がある。イベントやライブのありかたが変わっていく渦中に、今回イベントはやれることをやってみて非常に良い経験になった。これからも変わっていく先を見ないといけないと思っている。

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