日本フィルハーモニー交響楽団とのプロジェクト/放送内容要約

<JFNラジオ「FUTURES 落合陽一RADIO PIXIE DUST」> 日本フィルハーモニー交響楽団とのプロジェクト≪__する音楽会≫について。

放送内容

先日、私・落合陽一と日本フィルハーモニー交響楽団によるオーケストラの聴き方をアップデートする実験プロジェクトVol.4が発表された。タイトルはアンダーバーを2つ繋げて≪__する音楽会≫。

≪__する音楽会≫というタイトルにした理由は?

当日まで≪__する(ほにゃほにゃする)≫の中身が分からないという形でやっていこうということにした。試行錯誤しながらどういう音楽会に向かっていくかということを実験的にやり続け、随時アップデートして動画等で出していくのがコンセプト。読みにくいのでプロジェクトメンバー内では仮に「試行錯誤する音楽会」と読んでいるが、タイトルは当日になるまで分からない。タイトルは僕の中では決まっているのだが、それに至るまでにどういう感じになっていくかということを見せていきたい。

メディアアートは、コロナの状況下では弱いと感じた。歌手のライブや映画などのエンターテイメントは、もともとパッケージとしてオンライン配信がやりやすい。それに比べてメディアアートはオンライン化が向かない。現場に足を運んで楽しむタイプの作品なので、現場に行かないと分からない。現場で楽しめるものをオンラインにしても面白さが伝わらない。

そんな中で、「お客さんとのエンゲージメントを増やしていかないと、音楽会にならない」という思いが最初にあった。エンターテイメントに比べてメディアアートはお客さんとの対話性が低い。zoomでのミーティングの様子をひたすら撮っている。実験の様子や過程などを演奏会当日までにどんどんYouTube等で配信して、「どうする音楽会なんだろう?」ということを喋っていく。完成形だけでなく途中工程も見せることでエンゲージメントを増やしていく。お客さんにも色々考えてもらいながら当日を迎えてほしい

開催発表までの経緯は?

本来は2020年8月と10月の2回に分けて実施する予定だった。2020年3月頃に今年の音楽会はどうするかを話し合った。コロナの影響で、8月は準備が間に合わず、かつ、オーケストラが今まで通り演奏できるかも未定だった。どれぐらいディスタンスを取れば金管楽器がちゃんと演奏できるか、電子技術を使って遠隔地と揃えて演奏できるか、など様々な実験も行った。パケット遅延があるとノイズが入ってしまいダメになってしまうとか、電機的に遠くと繋ぐと指揮を少し早く振らないといけないとか、色々試していった。ソーシャルディスタンスするところと色々なところから合わさってくる実験の結果として、このオーケストラが出てくるだろう。

本番の10/13まで1ヶ月を切った。タイトル通り、毎週、何時間も使って色々な試行錯誤を重ねている。その様子を動画に撮っており、開演から終演に至るまで、何を考え何の話をしていたかを順次発表して、当日まで雰囲気を盛り上げていきたい。≪__する音楽会≫の中で、なぜタイトルが変遷して変わっていくのか、これってどうする音楽会なんだろう?っていうのを毎回考えてやっていこうというのがテーマ。

この音楽会の新しさは?

場所は、東京芸術劇場。同時にオンライン配信も行う。オンライン配信「も」楽しい。というか、オンライン配信は生ではないのでやりたい放題だ。例えば、≪耳で聴かない音楽会≫のように音を触覚に変換している。ああいうのはリモートでできるようにしてしまうとやりたい放題だ。一回音をマイクで拾うということがされていれば、各ご家庭でできるようにする手を今は取っていこうとしている。逆に、現場は一番制約が高い。オンラインなら遠隔地の音をミックスしてもあまり分からないが、現場はコンサートホールの反響のクオリティとそこに持ってくるスピーカー・配線・配信と生のオーケストラの音をうまく合わせないといけないのが大変。現場(オフライン)はホールの反響による音の良さを、オンラインは色々な物が乗っかってくる楽しさを楽しめる。もちろん映像も音質もこだわりがあり、BSぐらいの配信映像ぐらいのクオリティがある。クオリティは現場・オンラインどちらも面白いと思う。現場+再放送のチケットがあるクラウドファウンディングのパックがおすすめ。

これからオーケストラをどう開けていくかも挑戦だ。ソーシャルディスタンスを考えると席数は半分までしか入れないが、こういうホール物は席数が半分だと全くペイしない。それをどうやって成立させていくか?オンラインでやっていくのが普通になり、逆にその方法が飽和してしまうので、オンラインでどう付加価値をつけていくのかを考えていく必要がある。現場に何かを入れるのは大変だが、オンラインで何かをやるのは大変じゃないものもある。例えば、映像を合わせたり。そういう遊び方の提案になっているといいかなと思っている。ウィズコロナ下で実施するイベントの重要な礎と指針になるだろう。ソーシャルディスタンスを取ってオーケストラをやりつつ、ハーモニーをどうやって出すかを考えつつ、色々な実験をしようかなと。

前回は「メディアアートと映像」という音楽会としてどう捉えるかがテーマだった。今回は、「音楽会を作るまでの過程もアートである」という捉え方で作っている点が面白いと思う。このプロジェクトで俺は、WOWさんと映像の話をしたり、楽曲の解釈をどうするかを海老原さんと詰めたり、コンサート全体のギミックを考えたりずっとしている。それでやっていかなければいけないことをまとめたりしている。

音で聴いた物を絵に起こすにはどうしたらいいかをずっと考えている。だが絵作り自体は、指示はするが作り込みはしないスタンス。「映像の奏者」=映像が演奏の代わりにいる、という考え方でWOWさんに入ってもらっている。最終的なアウトプットは現場でリアルタイムで本人たちがやる、というのが醍醐味。

ステートメントについて

ステートメントは「新しいオーケストラの楽しみ方を提案する」。お客さんの参加の仕方も多様だし、見方も多様。最初のエンゲージメントの作り方から最後の持ち帰りまでどうやって見せていくかをテーマでやっている。

今回は「赤子のように」と言っている。初めてオンラインとオフラインがミックスされた状態でやる。「生楽器の良さを映像で引き立てる」というような話ではない。それも含めて全部ぐちゃぐちゃになっている。その中で、よかったこと・おもしろかったことを何度も色々な観点からカットして混ぜてみたいなことをしていきたい。

READYFORのクラウドファウンディングでは、7000円~300万円まで多様なリターンがある。おすすめは、配信ならではのCM企画。オーケストラの会場ではなかなかCMを入れられなかったが、これからはCMや配布物にスポンサーの名前が入っていたり。現場は現場でおもしろいことを作っていかなければならない。今までできなかったことを総決算で試行錯誤してまとめている。

これまでの演奏会のコンセプト

VOL.1 2018/04/22 耳で聴かない音楽会
VOL.2 2018/08/27 変態する音楽会
VOL.3 2019/08/20 第1夜 耳で聴かない音楽会2019
VOL.3 2019/08/27 第2夜 交錯する音楽会

耳で聴かない音楽会(Vol.1)は、触覚・視覚・聴覚など色々な感覚をミックスして耳以外でも音楽を聴けるかをコンセプトにやっていた。変態する音楽会(Vol.2)は、オーケストラを目で聴くのがコンセプト。ダンサーや映像が合わさって作った。耳で聴かない音楽会2019(Vol.3)は、音声文字変換などを用い、音を絵で解釈し直すことに意識的に取り組んだ。交錯する音楽会(Vol.3)は、完全にメディアアートに振り切って、映像表現と古典的なテープレコーダー等の表現と、日本と電器楽器、質量への憧憬、工業社会と日本、それでオーケストラが輸入されてどうなったか、等のステートメントまで含めて、なぜ日本でオーケストラをやるのかというところまで踏み込んだ音楽会。

今回の音楽会は、オーケストラがニューノーマルにどう適応して、音や光や、オーケストラが今まで持っていた要素と電子技術と情報技術が組み合わさった上で、オーケストラの生存が危ぶまれている世界でどうやって考えていくか。

演奏曲目・ストラヴィンスキーの「兵士の物語」について

ストラヴィンスキーの「兵士の物語」を演奏する。100年前スペイン風邪が流行った時の音楽。ストラヴィンスキーはその状況下でどう音楽会を続けようとしたのかが楽器編成や楽曲の構成にも現れている。少ない人数で演奏できるオーケストラの曲として書かれていて、それを今風に解釈し直して劇ではなくオーケストラとして見せるにはどうしたらいいか、少人数でやるオーケストラをどう解釈するか。

耳としては贅沢な音がするだろう。人が少ない分音圧は出ないが、オーケストラの各楽器の味わい深さは気持ちよく聴こえるはず。スペイン風邪の当時は人を少なくすることぐらいしかできなかった。100年経ったウィヴコロナの今は、映像装置やネットワークなど色々なものを使って何とかできる。そういった観点を含め、楽曲やオーケストラの面白さをみんなに気づいてほしい。

関連資料

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