マレーシアで映像と物質のはざまを考える(8分)/放送内容書き起こし

<落合陽一録第4回> 2016年のマレーシアの展覧会,2017年の東京の展覧会を振り返りながら追憶する第4回.

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2020/06/05 落合陽一公式note YouTubeチャンネル第四回はマレーシアで映像と物質のはざまを考える

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放送内容書き起こし

0:00 2016年、初の個展「Image and Matter」マレーシア

こんばんは。落合陽一です。今回は「Image and Matter(イマージ・アンド・マター)」っていう個展と「Imago et materia(イマゴ・エト・マテリア)」という個展の話をしようかな、と思っていて。

僕が初めて大きな個展をやったのは、28か29歳ぐらいの時だったと思うんだよな。マレーシアで初めての大きな個展をやって。当時の僕の興味って言うのは、やっぱ「デジタルネイチャー」「映像と物質」。特に「映像と物質」っていうものへの興味がすごい大きかったから、展覧会のタイトルを「Image and Matter」にして。博士の頃から映像でありながら物質っぽいもの、物質でありながら映像っぽいものを探してて、映像でも物質でもないものをどうやって作るのかっていうのが僕の博士時代のメインテーマで。で、もちろん作品も「映像の新しい形」や「物質の新しい形」みたいなものを追い求めてて。その2項対立の中に、昔読んだ本とかから影響を受けてこういう構成になったんだけど。例えば、シュレーディンガーの本とかエリクソンの本とか『精神と物質』とか『物質と記憶』とか。で「イメージとかイマージュって何だろう?」ってことをずっと考えてた頃に、イマージュ、イメージ、映像、物質、記憶、映像と物質、精神と物質。でそういった中に、我々ってどうやってものを考えるんだろうなみたいなことをずっと考えていた挙句、「映像と物質」っていうのを博論のテーマで考え始めて。映像とイメージ、ImageとImago、イマージュ…。そして形って何だろうってことをずっと考えてて、そういう「Image and Matter」みたいなところに辿りついたっていうか、そういうことを考えるようになったんですよね。

2:10 2つの個展に共通するキーワード「映像と物質」

で、もともとデジタルネイチャーっていうことをテーマに考えてたのもなんでかっていうと。映像と物質の間にあるものっていうことをずっと考えていたことを、一般化したらどうなるんだろうなと。「映像と物質」「質量のない自然」と「質量のある自然」みたいなフレーズとか言葉が出てきて、その中にまあ「計算機の上にある自然」と「計算機の外にある自然」が一つになった自然。じゃあ、デジタルネイチャーなのかなって。そういうところを考えて、じゃあ「映像と物質」の次は「デジタルネイチャー」だろうと、デジタルネイチャーの研究室を始めて。で、かれこれ5年6年やってきて、今になるわけですけど。

だから、初期はずっと映像と物質の間について考えていたなと思って。それがタイトルについてる展覧会がその「Image and Matter」と言うマレーシアでやった展覧会と「Imago et materia」って言う、六本木にAXIOMってギャラリーがあるんですけど、そこでやった展覧会その二つが、僕の中ですごい印象的でしたね。

3:10 展示作品紹介

で、何展示したかって言うと、当時研究をずっとやってたー―例えば、メカニカルマテリアルの変形構造みたいなやつから、磁性流体使った触覚ディスプレイまで結構ハイテックなものまであったりしたんですけど。

3:22 展示作品紹介①視野闘争のための万華鏡

やっぱ昔の、修士の頃の作品ですね。『視野闘争のための万華鏡』って言う……。当時、Retinaディスプレイが出た時――たぶんあれは学生だったかなあ――それだったら万華鏡作ったらずいぶん反射回数デカいし、相当面白いものが作れるんじゃないかなと思って作った万華鏡の作品とか。

3:41 展示作品紹介②桜メディア

あと、大学4年の終わりぐらいに震災があって作った、桜にプロジェクションマッピングする作品があったんですけど、その作品とかオマージュしたりだとか。

3:52 展示作品紹介③サイクロンディスプレイ

後は、学部4年の時に作ってた『サイクロンディスプレイ』っていう全ピクセルが駒になっている作品があって、それ出したりとか。

4:00 展示作品紹介④ゾートログラフ

当時一番新しい新作だったのは、『ゾートログラフ』って言う、ゾートロープとシネマトグラファー合わせた作品があるんですけど。それを初めて出したのが確かマレーシア展で。

4:15 展示作品紹介⑤アリスの時間

確かあの時、『アリスの時間』って言う時計の作品があるんですけど。『アリスの時間』出したりとか、いわゆるイメージと物質の間で、物質側に寄ったメディアアートっぽい作品だったりとか、あとイメージをどう人が見るかっていうところに寄った表現とか。

4:30 展示作品紹介⑥Levitrope

あと、当時新しく作ったのはあれだな、『レビトロープ』っていう、銀色の浮いた球体が回る作品があるんですけど。あれとかをね、当時確か出してたなあと。

4:42 展示作品紹介⑦Human Breadboard

その他にも例えば、『ヒューマンブレッドボード』っていう、ブレッドボードがブレッドボード上に、上から見るとまたブレッドボードの形になるようにブレッドボードが並んでいる作品があって。

で、ブレッドボードって何かって言うと。例えば、電子工作するための穴の開いた板もブレッドボードって言うし。光学常磐って言ってデカいレーザーとかを打つ時に、光学実験系を組む時にレンズとかを固定する枠もブレッドボードって言うんだけど。要は固定する木の枠ではなくて、三次元の造形を固定するためのカンバスとしてのブレッドボードだったりとか。電子ブレッドボードとオプティカルブレッドボードって、だいたい穴の間隔が10倍ぐらい違うんですけど。それで使い分けてるんだけど、両方使ってる展覧会は珍しかったなと思ってて。

なんかでもまあ、『アリスの時間』なり『レビトロープ』って言うのは、すごく思い出深い作品で。レビトロープは360°カメラで撮った球みたいな風景が銀球の表面に貼り付いて見えるし、それが回転してたら新しい映像装置なんじゃないかなと思ったのが、最初の作りだし。

5:50 今まで見たことがないものが見たい

そのあと日本でやった「Imago et materia」――「Image and Matter」のラテン語が「Imago et materia」って言葉なんですけど――。もっとアート性が高い、ギャラリーっぽい展覧会で。であれが僕の中では初めての個展をマレーシアでやった後、ギャラリーでやる初めての展覧会だったんで。2017年の頭かな。

この「映像と物質」の間の関係性っていうのを、ずっと探っていく中にきっと何らかの意味はあろう、っていうことを、技術的な興味から出てくる新しいメディア装置の見え方みたいなことをずっと考えていて。「エジソンが発明しなかったものを、再発明したらどうなるんだろう?」とか。今でももちろん、それを最初に見てみたいから研究してるとか、作品作ってるっていうのがあって。まあそれだけを生き甲斐に生きているんですけど、僕は。今まで見たことがないものが見たいためだけのために、すべてをやっているんだけど。

だけどその当時作ってた作品とか、その当時思ってた考え方っていうのを今こうやって見直してみた時に、「ああ、なるほど。この時俺ってこういう考え方してたんだ」みたいなのは、ふと思い出せる時があって。で、そういうのをね、大切にしていきたいなと思うから、記録って大切だなと思うんですよね。

いやー、マレーシアなあ、またマレーシアに展示とかやりに行きたいなって思いますよ、タイでもいいしマレーシアでもいいし香港でもいいんだけど。そうだなあ……、マレーシア展と六本木の展覧会とあと「ジャパニーズテクニウム展」っていうのをやるんだけど、その辺りの展覧会はやっぱ僕にとっては重要だったなと、今思うと思ってます。