レンズという演算装置,仕事道具を語る50mm編・Leica Noctilux(10分)/放送内容書き起こし

<落合陽一録 第7回>落合陽一が仕事に使うレンズの話,演算装置としてみている話を語りました. Leica Noctilux 50mm (ライカ・ノクチルックス) の歴代レンズを眺めながら.

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”レンズの特徴の話.途中で出てきた展覧会→ 情念との反芻
https://bijutsutecho.com/magazine/news/report/20473”(公式YouTubeコメント)

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2020/06/29 落合陽一公式note 第7回「レンズという演算装置,仕事道具を語る50mm編」 

BGM

放送内容書き起こし

0:00 50mmのレンズが一番好き。シチュエーションで使い分ける

落合陽一です。好きなレンズについて喋っていこうかなと今回は思っていて。で、僕がよく使う好きなレンズ「Noctilux(ノクチルックス)」って言うLeica(ライカ)の、すごい明るいレンズがあるんですよ。これは現行の、今現在、発売されているNoctiluxで、制作にはNoctilux色々作ってるんですけど。これはいわゆる何だろうな――すごい明るい F0.95のレンズ、50mm。僕が一番好きなのがやっぱり50mmで。50mmのレンズってすごいいっぱい持ってたりするんだけど。で、50mmのNoctilux、歴代歴史があって、これが今の「非球面型」のNoctiluxっていう現在のNoctiluxで。

で、これが昔の「球面レンズ」を採用したNoctilux。これ、2代目から設計が変わってないやつ。これは何か、1987年製なんで僕の誕生年と同じレンズです、こんなのがあったりとか。これはこれで球面ぽいものが撮りたい時とか、明るいシチュエーション――これはそんなに多くないんだけど使うこと――シャープに映したい時にちょっとだけ絞ったりだとか、開放でも撮れるんですけど、まあこれを使う。まあ、使い分けで使っています。

インスタとか、そうだな――過去の個展とかでわりかしよく使ってたのが、このNoctilux。これ、どっちもちょっとヘッドの形が違うものを使ってるんですけど、こっちもこっちもf1.2の1960年代製のNoctilux。片方がファーストロットで、片方がセカンドロットかな。どっちも結構昔のやつなんですけど、まぁこんなレンズを使ってて。で、これをね、すごくね、愛用して使ってます。覗いてみた感じが、右と左で微妙に違ってて。多分、ライカの人の話によると「後玉(うしろだま)の付ける向きを、逆向きに片方ついてんじゃないか」と言われてて。要はこれが不良品で、こっちが正しい品。で、こっちの写りって言うのは、ちょっとぐるぐるボケが出るような感じなんだけど、すごいシャープで、でもかわいい写り方をするなあと。まあこれは、アナログのカメラ――フィルムのカメラとか、あと白黒とか、シンプルに1枚で撮りたい時の背面液晶がないモデルを使って撮影したりする時はこっちのNoctiluxで撮ってます。これはすごく状態のいいNoctiluxで。まあでも、僕が使ってると結構使い込んじゃうからなぁ。でも、後世に残る1960年代の名レンズ。

2:47 不良品のNoctiluxだけで撮った写真展

方や一方、ぐちゃぐちゃの絵が撮りたい時っていうか、なんかすげーボケてるやつとか滲んでるやつが撮りたい時に使ってるのがこっちのNoctilux。これは多分、探しても不良品のNoctiluxで。純正のNoctiluxの後玉を逆向きに入れ替えればこれになるらしいんだけど。でもなんかそういうことしなければ、これは相当ユニークな個体で、変わったやつなんだけど。これはね、相当使ってます。

で、このレンズには思い入れが深くて、これを使って撮った写真だけで個展をやったことが、Leicaであって。Leicaをずっと使ってるから、Leicaで個展やるって言われた時に、「Leicaすごく愛着あっていいな」と思って。当時Leicaにいて――まぁ今もいらっしゃいますけど――小池さんっていう仲いい知り合い、友達が居まして。その小池さんと話ながらですね、「この写真どれにしよっか?」とか「この刷り上がり、もうちょっと青み強くならないかな?」とかそんなこと言いながら、Leicaに通ったのが、ちょうど去年くらいかなぁ……懐かしい。

3:55 メディアーティストとしての活動の中の”媒体”に写真がある

タイトルは「情念との反芻」。この時の展覧会だったのを聞いて(?)、何かすげー滲んだレンズでコンピューターでは生成できないような滲みみたいなもの。もちろんコンピューターの専門家としては「コンピューターで生成できないような滲みは、理論上ない」って言いたいんですけど。ただ光学計算――光線を計算したりとか、滲みを計算したりするには、すごいたくさんの計算機リソースを消費するので。フィジカルに光がこう当たって、その様子を変化をする装置っていうのは、圧倒的に速い。速いんですよ。

計算機リソースも食わないしね。センサーで受け止めて、ナチュラコンピュテーションとかいうジャンルなんだけど。その圧倒的な速度があるわけじゃないですか。光をワンショット入れるだけで、計算が終わってるって意味においては。で、そんなことを考えながら「じゃあ普段、フィジカルなものを撮ってるって言うことって、一体何なんだろうな?」っていうのを、ずっと考えながらやってて。

メディアーティストとしての活動の中の”媒体”に写真がある」って僕は位置づけなんで。この写真家の人と、たぶんちょっと見どころが違うのは、きっとこの光がどう振る舞うかっていうことを普段研究したりだとか。レンズの研究自体も、大学でレンズシミュレーション組んだりとかさ。網膜の投影のための「ここ(目)のレンズの歪みって、どのくらいあるんだろう?」とか「収差ってどうやって目で出るんだろう?」とか。そういったことを研究したりするんだけど。そういうようなことをしている中でじゃあ「光って何だろう?」と。「光と自分が付き合っていく中にある物って何だろう?」っていうことが、コアにあって写真を撮っているんだと思うんですよね。

僕にとってのレンズってすごく愛らしいアナログの計算機で。で、これを計算機だと思って見てる人ってそんなにいないけど。でもだって、コンピュータの中で計算したら莫大な処理時間がかかるものを、フィジカルな空間に存在してくれてて、こいつをはめるとなんか古めかしい計算が処理されて終わって出てくるっていうのは、計算機ロマンじゃないですか。さわれる演算装置としてのレンズって言うのは、やっぱ愛らしいなぁ、と思って眺めてるんですよね。

5:57 50mmが一番自分の目のが核に合っている

35mm、50mm、75mm、90mm、135mm、それ以上。あと、35mm、28mm、24mm、21mm、16mm。だいたい全部万遍なく使うんですよ。使うというかめっちゃ持ち歩いてもいるんだけど。その中で僕が一番たぶん「自分の目の画角に合ってるなぁ」と思ってるのは50mmで。その中で「Leicaの50mmで一番好きなの何ですか?」って言ったら、1960年代のこの古いNoctiluxの50mmがやっぱ好きで。でもバッキリ撮るとか、これだけでは完結しないんで、使う時どっちですかっているとこっちの現行のNoctiluxももちろん使うし。で、日常の中とか普段スナップショットを撮る時使っているのはと言われると、こういうの使うし。こういうのローテーションを組んでいくのが僕の中ではすごく好きなんですよね。

まあもちろん1個1個全然撮影した画像を比べると違ってるんですよ。1960年代のNoctiluxで撮ると特徴的な絵面になるし。あとこの展覧会の時にポジフィルムの展示もしたんですけど、ポジフィルムをロボットアームがカチャカチャと切り替えていくやつなんですけど。そのポジフィルムの中身はこいつで撮ってるんだよね。それはね、見るとと一発でわかる、たぶん。「その光学性能とかレンズ設計ってどうなってんだろうなー」って思いながら。あとMTFっていうのがあるんですけど、MTFを見ながら「ああなるほど、こういうようなあれなんだな。Point spread functionってどうなってるんだろう」とか、そういうのを見るんですよね。

僕にとってのこのレンズの演算性能っていうのは、すごく気になっていて。で、そこから漏れ出した情念っていうのを、どうやって考えていくか。その「情念との反芻」っていうことをどうやって考えていくんだろうか、みたいなことは、また回をあらためてですね。「情念との反芻」展を振り返りながら貼っていきたいと思います。

7:53 スナップショットはスポーツ。その日の集中力でレンズを使い分けている

今日は50mmの話だったけど。50mm以外にもきっといっぱいあって。75mmは、僕は結構こだわりが強くて。75mmで撮るものも結構あるんですよ。例えばこれ。表紙のやつはソルトプリントで作った作品の白黒のやつなんだけど。75mmとかででかい鳥居とかしめ縄とかを撮ったりしてるんですけど。75mmは75mmでね、愛着がありますね。

で、レンズをどういう時に使い分けてるかっていうと。レンズはその日の集中力で俺は実は選んでいて。被写体どうするかっていう時も、もちろんそうなんだけど。スナップショットってやっぱスポーツみたいなもんだから。スポーツ的に撮る時はやっぱ75mmって相当集中力高くないと、ブライトフレームが――レンジファインダーで撮ることが多いんで――レンジファインダーで撮る時にブライトフレームの幅がすごく狭いんですよ。集中力ある時に使うやつとか、全体の外観で撮りたい時はちょっと広角の。

0:00 レンズは光に乗ってきた情報を捉えるためのアナログの計算機

レンズはね、無限に語れるんで。また機会を改めてレンズを語っていきたいと思うんだけど。多分でも、みんなはきっとレンズはレンズだと思っているけど、俺は演算装置だと思ってんだよね。この世界の光っていうのに乗ってきた情報を捉えるための、壊れやすい――なんだ、壊れやすい――この滲みとかを生み出すアナログの計算機だと思うと。もうね、堪らないんですよ、これは。「君は何十年前から来たんだい?」って言って。でも、何十年前から来て、でもこれをじゃあどれを選んでどれを組み合わせてどういうものを最後作るかっていうところに対して、まぁねぇ……。オペレーションシステムが一緒で定量的に評価できるものだったら、あんまりコンピューターの計算能力ってあんまり関係ないのかもしれないんだけど。ただ光っていう空間に漂っているものを捉える的なアナログの計算措置っていうことを考えたら、それが持っている特徴ってやっぱりね、定量的に測りづらいところがあって、それがすごく面白いなあと思って、普段撮らせていただいてます。じゃあ、今日はこんなところで。