平井大臣と語る「日本のデジタル戦略」 #林千晶 #平井卓也 #斎藤祐馬 

<WEEKLY OCHIAI シーズン4-36(62分)> 菅義偉首相が「デジタル庁」の創設に強い意欲を示している。背景にあるのが新型コロナへの対応で露呈した「IT後進国」の汚名。内閣府や経産省など各省庁でIT行政の担当が分かれていることで、医療や教育面などでオンライン化の遅れが目立った。デジタル庁では各省にまたがるデジタル部門を集約するということだが「デジタル庁」とはどのような組織であるべきなのか? 日本のデジタル戦略の方向性について専門家と議論する。

出演者

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  • 林千晶 ロフトワーク共同創業者/代表取締役
    「株式会社飛騨の森でクマは踊る」の会長も務め森林再生とものづくりを通じて地域産業創出を目指す
  • 平井卓也 デジタル改革担当大臣
    1980年電通入社、1987年西日本放送社長に就任、2000年衆議院選で初当選、現在7期目
  • 斎藤祐馬 デロイトトーマツベンチャーサポート 代表取締役社長
    公認会計士。世界中の大企業の新規事業創出支援、ベンチャー制作の立案まで手掛けている。著書に『一生を賭ける仕事の見つけ方』

佐々木紀彦

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関連記事・視聴者の感想

要約

【オープニング】視聴者へ今日の見どころ (00:00~)

落合 デジタルとは、生物的なものなのか、質量のないものなのか質量のあるものなのか、そして我々が望んでいるデジタルの解像度とは何か。質量のないものの方がコピーしやすい。元本がデジタルの方がより本質的なような気がする。ソフトウェアの方を尊重しようという社会は、人間性を尊重した良い社会だと思う。
その反面、コロナになってからデジタルでオンラインでソーシャルディスタンスを取って、かつフィジカルなものをないがしろにすると、意外に社会の祝祭性が下がったり密なコミュニケーションが取れなくなる。人間はこんなにも動物的だったんだと思ったりする。コロナによって今一度デジタルについて考えてみる機会が多かったのでは?
そんな中「デジタル庁」だ。1か月ほど前にデジタル庁の話(※9/2放送Weekly Ochiai『ポスト安倍時代の「日本の挑戦」』)をしたばかりなのに、いつの間にかデジタル庁が既定路線になった。社会が変わっている所にいるというのを皆さんと目撃していきたい。

【佐々木】出演者の紹介 (02:00~)

ーソーシャルディスタンスを取ったスタジオ。冒頭MCの佐々木氏から振られ、10/3放送NHK『ズームバックオチアイ』のオードリー・タンとの対談内容に触れる落合ー

落合 コンヴィヴィアリティと祝祭性、侘び寂びあたりの話をした。台湾にとっての祝祭は民主主義であり選挙。選挙によって勝ち得たもの。一方、日本で選挙が祝祭だったのは自由民権運動や大正デモクラシーなど100年以上前で、祝祭性が失われた状態。コロナに対してデジタルトランスフォーメーションで対策していくのは祝祭かもしれない。そういった観点で言うと、デジタル庁ができることは新しい祝祭な契機な気がする。
出演の平井さんとはムーンショット会議で語り合った仲。
平井 ムーンショット会議の時も今までとは全然違うことをやろうということで、珍しく予定調和ではない、奇想天外なアイディアが出た。
斎藤 先週の土日にスタートアップ400社に連絡し約320社アンケート回答を得た。今日はそれを政策提言として平井大臣にぶつけたい(31:57~)。平井大臣にはコロナの資本制ローンで色々動いてもらい実際スタートアップに数千億円の支援があった。

【平井】議論の前に前提確認「デジタル庁は何するところ?」(05:08~)

ー出演者の紹介が終わり、前提確認として「デジタル庁は何をするところか」を平井氏から説明。ー

平井 オードリー・タンさんが「ITは機械と機械を繋ぐ、デジタルは人と人を繋ぐ」とインタビューに答えていた(※注:引用の出典は不明だが似た発言として2020/09/21日本の中高生との対話集会で「私はIT担当大臣ではなく、デジタル大臣です。デジタルは人と人、ITはマシン同士の関係なので」がある)。デジタル庁は人間中心の社会を進化させるのが目標。その為の手段として「国と自治体のシステム統一」「マイナンバーカード普及促進」「行政手続きオンライン化」「オンライン診療・デジタル教育の規制緩和」などの役割がある。
コロナによって2000年からスタートしたIT戦略のデジタル投資が役に立たないことが判明した。デジタル敗戦だ。その反省からデジタル庁の構想が生まれた。
フリップにある4つはデジタル庁のベースの仕事。その中の「マイナンバーカード」について。日本はIDがないままデジタル化を進めたのが失敗。

【林】マイナンバーカードの問題点、女性や若手の登用(06:30~)

ーここから、林氏を中心にマイナンバーカードの問題点、海外に比べて日本の政治家には女性や若手が少ない点が話題に。女性や若手の登用については左記blogに詳しくまとまっている(2020/10/08 デジタル庁って何をするの?)ー

佐々 (11:38~) 電子政府ランキング2020によると、日本は14位。1位デンマーク、2位韓国、3位エストニア。日本のデジタル化を進める上で参考にしている国は?
平井 エストニア。マイナンバーを進める上でも参考にした。エストニアは進んでいる割にデジタルデジタルしていない。日本が目指すのは同じように、デジタルを意識しない社会。

佐々 長官としてデジタル庁に選びたい人物像は?
平井 この国の未来に対して挑戦して変えようと言う気概のある人。テクノロジーに理解があった上で政府のシステムの弱点を理解できる人。そしてお役人グループをうまく使える人。自分は大臣の中で一番スタッフが少ない200人規模だ。大部屋のフラットな組織でスタートアップ企業のような状態(GaaS)。小さく生んで、大きく育てていく。組織自体がアジャイルだ。エンジニアだけ民間でもダメで、管理職も民間に依頼したいと考えている。

【落合①】デジタル庁の最初の仕事は「デジタル」の日本語訳(21:00~)

ーここまでメモを取りながら無言だった落合。佐々木に発言を促され、話の骨子がズレていると指摘。デジタル庁の話をする場なので「デジタルの周りに人がどうこういるはぶっちゃけどうでもいいと思うんだよな」と、デジタル庁がやらなければならない仕事について話題を変えるー

落合 Ministry of Digital transformation(デジタル庁)、Minister for Digital transformation(デジタル改革担当大臣)という英語は分かりやすい。
平井 内閣法制局という組織で「デジタル」という言葉が使えるかを決める。「データ」という言葉は議員立法で使えるようにしたが「デジタル」は使えるかまだ決まっていない。「デジタルプラットフォーム」だけは解禁されているが。
落合 デジタルを訳すのは難しい。「計算機の」と訳すと「Computational」になってしまう。「計数的な」と訳されることもあるが、どれもなじみがない。日本語になってないものを日本で扱うのは結構大変なことだ。
平井 となると、法制局的には「デジタル」という言葉を定義しながら法律を作ることになるだろう。まだAgencyかMinistryかも決まっていない。
落合 Mediaを媒体と訳したのはうまい。「デジタル」を日本語に置き換えていく作業は、一番最初にやらないといけない仕事の一つだと思う。準備委員会を立ち上げたら、そういうことからやっていく必要がある。

【落合②】行政手続きをスマホで完結。デジタルを標準に(23:47~)

落合 デジタルに変えないといけない行政手続きのうち、プライオリティはどうやって決めるのか?
平井 国民が一番使う、便利になるものから。行政手続きはしょっちゅうやるわけではないが、少なくとも「1人に10万円配る」ためだけにあれだけの手間暇をかけた結果、コストが1500億円もかかったのは馬鹿げている。マイナンバーカードと国から振り込む口座を紐づければすぐ振り込めた。
また、保育所の申し込みのように、わざわざ役所に行かなくて済むように、ほとんどの手続きをスマホで完結させたい。そのためにデジタル庁が主導してUI/UXをベンチャーに依頼していく。
落合 各自治体で分かれてしまっていた行政書類・サービス、ドキュメントの一覧みたいなものから、ひとつのプラットフォームに集約する考えになるだろう。
平井 政府は二度同じことを聞いてはダメ。エストニアのように「Once Only」にするためにベース・レジストリの整理が必要。日本は色んな番号を色んな人が振ってしまっている。ベース・レジストリのオーソリティもデジタル庁の仕事。(※参照:スマートシティを支えるベース・レジストリ
落合 デジタルが標準だという考えを打ち出す必要がある。デジタルのリファレンス(文書)の方が正しい値で、そこから排紙されるのはすべてコピーだ。世の中のドキュメントはまずデジタルで作ってからそれを紙に出力している。だが日本は、契約書なども紙の方が正とされるのは、バカバカしい話だ。
平井 あれはもう変えようと思っている。

【平井①】予算要求の背景にある構造的問題(26:40~)

落合 エストニアのコアアイディアはデジタルの方を標準に置いていること。
平井 エストニアは「デジタルにすると皆が有効に使える時間が増える。GDPの2%にあたる」と説明をした。日本も同様の計算ができるだろう。
佐々 そういった対応を含めて、一般会計・特別会計年間7000億円の調達全体を統括するのがデジタル庁の一番大きな仕事か?
平井 一般会計が4000億円、特別会計が3000億円。年金や登記などベンダーロックインされた大きなシステムがある。問題は、新規にシステムを作るのが3000億円、4000億円が維持管理という構造。維持管理費がかかりすぎている構造的を変えない限りイノベーティブなものはない。国も地方も一気に変えるわけにはいかないので、デジタル庁がバックキャストでスケジュールを決めて理想的な構造像を示す。
システムはレゴブロックのように一部分だけを取り換えることはできない。全部やり替えなければならないシステムをどう変えていくかを考えるチームが今一番必要。
落合 確かに。レガシーなシステムと共存しないといけなくて、そっちのコストの方がデカいというのはなかなかな状況。でもガラガラポンにする(一から作り直す)と情報の流出・消失など色々なリスクが付きまとう。
平井 かつ、今動いているシステムでしょ。データ移行なども大変だがスケジュールを決めてやるしかない。

【平井②】2025年までに統合を目標に、バックキャストで理想的な構造像を示す(29:35~)

佐々 2025年までに統合するという話でしたっけ?
平井 「2025年でも遅すぎる」と言われるが、システムが分かっている人にはそれってすごい大変なことだと分かるはず。
落合みずほ銀行は20年かけてシステム統合を進めており、バベルの塔かサクラダファミリアを作っているのかとよく言われることに触れ)サクラダファミリアは縦に立っているからまだいい。デジタルは設置面が増えるほど補修量が増えていくから難儀な話。だがエストニアが20年かけてやったことが5年でできるならすばらしいが。
平井 エストニアでマイナンバーカードをローンチしたのが2002年。最初は普及しなかったが5年後、金融系サービスが便利になって一気に普及した。
佐々 国民に「変わった!」という実感があると一気に普及が進むんでしょうね。
平井 エストニアは九州ぐらいの面積に大分県の人口、冬は雪で移動が大変。投票も裁判もスマホでできる。山間部の高齢者の投票率が上がった

【斎藤①】スタートアップ企業300社アンケート結果からデジタル庁への提言(31:57~)

ー「そろそろ次の話題に。いいシステムを作るのにはスタートアップの協力が大事。そこで斎藤さんから提言があるということで。」と佐々木。ここまで無言だった斎藤。スライドに沿って、スタートアップ企業のアンケート結果を発表。結果を元に議論。IT企業経営者や大学教員として感じてきた入札の煩雑さを語る落合。IT調達10%という値が低いのではと言う林の疑問に妥当性を回答する斎藤・平井ー

斎藤 大きなシステムの変更には時間がかかり、国民から見るとわかりづらい。このUI/UX、見た目や使いやすさの部分で力を発揮するのがスタートアップだ。日本を代表する300社以上の話を元に3つの提言したい。
平井大臣のスローガン「ガースー(Government as a Startup)」。(※参照:2020/09/30 ハフポスト 「ガースー」がスローガンってどういうこと?デジタル庁の準備室発足で話題に) ⇒スタートアップ的な組織を目指すGaaSの実現には、スタートアップとガバメントでオールスターを作る「Start Up and Goverment Allstars」である必要がある。だがオールスターチームは今の構造で作るのは難しい。

落合 (38:13~ 3つの提言に対し) toC、toB、toGはだいぶ違う。
斎藤 ガバメントが国民と触れ合う部分のサービスでスタートアップが活躍することで「政府が変わったな」と国民から見て分かりやすい。
落合 GtoCの間にtoCに慣れたスタートアップを入れるのは確かに効果がある。ただしそこで満足させる相手はGではなくCでなければダメ。だとすると提言で配慮すべきは、G側は入札を結構緩くやらないといけないが、納品は緩くしてはダメ。どうやって進めるかうまい勘所の人が必要。
斎藤 まさにそう。スタートアップが政府と仕事をするときに5つの壁がある。

平井 全部承りました。検討させてもらいます。

【落合③】データ保護のプロセス策定の難しさ(42:55~)

落合 GDPR(EU一般データ保護規則)、CCPR(カリフォルニア州新プライバシー法)などのデータ保護やデータの扱い方が気になっている。大阪トラック(※G20大阪サミットの際に立ち上げられた,デジタル経済,特にデータ流通や電子商取引に関する国際的なルール作りを進めていくプロセス)はすごく良かったと思う。我々が実務的にこれからDXをやっていく上で「日本風デジタルと情報の関わり方」はどういったタイミングで提言を決めるのか?
平井 データの基本的ルールやカタログのオーソリティもデジタル庁がやる。その作業に入っているところ。
落合 それを最初に決めるのはすごく難しい。アジャイルに決めて行かなければならないことのひとつ。法令と異なり、情報開発に近い。「運用してみてダメならルールを変える」のを速いスピードで回す必要がある。
平井 まず基本原則を決めた上で、業種によるローカルルールを作ることになるだろう。今は基本原則すらないので、今度入ってもらう委員で議論しよう。

ー落合氏は平井大臣のデジタル改革のメンバーになるようだ。10/12、官邸から正式に発表(デジタル改革関連法案ワーキンググループの開催について)された。ー

【斎藤②】スタートアップ300社から見たデジタル庁の実務を担う人物像(46:00~)

ースタートアップCEOの経験者が良いと5割が回答。具体的な人物像は、「1位DeNA創業者 南場朋子氏(18票)、2位 東京都副知事 ヤフー元社長 宮坂学氏(11票)」とバラける結果に。結果を見て「デジタル庁を担うのはもっと若い人が良いのでは」と、番組冒頭から終始、若手・女性の活用を訴えてきた林。同時に、高齢者がデジタルを義務教育として無料で学べる仕組みを小中学校の中に作ってはどうか(二度童)と提言ー

平井 高齢者がスマートフォンやタブレットを自由自在に使いこなせるようにする学校ということだね。それはやるべき。
落合 高齢者がデジタルを使いこなせない原因はほぼ、ユーザーインターフェースが悪い。UIの悪さ、煩雑な書面、整理されていない書類群。それはデジタルのせいではない。目が見えなくてネットショッピングするのは大変、耳が聞こえなくて動画コンテンツを見るのは大変、高齢になって現状のUIを使いこなせないのも当然。だが色々な感覚に置き換えればデジタルで対応可能になる。だがその話と、デジタル云々の前に情報がぐちゃぐちゃなのは別。
平井 今後20年のデジタル化の方針の柱となる「IT基本法改正」が一番大きな話。なぜデジタル化を進めるのかを、きちんと国民に説明しなければならない。そこで、Society5.0ー目指すべき社会像の中身を説明することになる。
落合 各省庁を所轄してインターフェースを揃えて地ならしをするのがデジタル庁の役目。横串と縦串どちらも刺すのがデジタル庁。だからブルドーザーのような人が最初は必要。

ーと、立ち上げ時には「若さ」だけではなく組織を動かして前に進む経験が不可欠だと言う流れに。ここで議論の途中だが平井氏の予定時間が迫っているため、まとめの時間へ。各々メッセージをボードに記載してまとめのコメントー

【まとめ】デジタルを日本語で言うと (55:20~)

斎藤 『政府IT調達10%をスタートアップへ』
繰り返しになるが、デジタル庁がこの5年10年でデジタル先進国にしていく。その副産物として例えば、アメリカのパランティア(売上の47%が政府からの発注)のように時価総額1兆円を超えるようなベンチャー企業がどんどん生まれるためにも、10%をスタートアップでぜひお願いできれば。
平井 『No One Left behind』
オードリー・タン氏と同じ考え方。ここまで遅れている日本は今さら「格差を広げる・誰かを切り捨てていく」デジタル化をする意味はない。アメリカ流・中国流ではないデジタル化で、完全に皆を引き連れていく。デジタルとアナログ、サイバーフィジカルに解決しなければいけない問題。そこがデジタル庁がスタート時点で重要なポイントになる。

林千 『二度童(にどわらし)』
子どもの頃の義務化も年を取っての義務化もある。だから二度童で全部をデジタルのところでは、義務化する、権利化するのをおすすめする。

落合 『情報・多様性・持続可能性・計算機 [?]←定義』
今、福沢諭吉が英語を訳したような時代感がある。全部カタカナで言われすぎてきたが、デジタルに関しては10年20年遅れ。計算機資源=ハード、情報=ソフト、多様性=人類、持続可能性=環境の問題があり、デジタルに対応する言葉が中央に漢字で入る。その言葉があれば高齢者でも納得する肌触りのあるものが出てくるはず。持続可能で情報技術でかつ多様性があって計算機資源を使うんだけど、それを漢字・日本語で何て言うの?それを考えるのが、今後1年の仕事だろう。