落合陽一さんが解説「天才」と「変態」の違い

<JFNラジオ「FUTURES 落合陽一RADIO PIXIE DUST」視聴者からの質問メール> 番組後半の2通目は『働き方5.0』で登場する「変態」という言葉について質問が。リバティさん(20代男性)からの質問「『働き方5.0』の中で『変態』ということについての文章がありました。以前『変態する音楽会』もされていましたし、『変態』は落合さんにとって重要なのでしょうか?」に、落合さんがキーワードを解説しました。

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※『働き方5.0』第三章(163頁~)のタイトルは『「天才」ではない、「変態」だ』。

放送内容文字起こし

ああ、良く分かったね。『変態』というのは『Transformation(トランスフォーメーション)』ですからね。僕の作品は何を表現しているって、だいたいがトランスフォーメーションを表現しているんですよ、はい。なので、トランスフォーム重要でございます、が。ちなみに本の場合の変態はトランスフォームではないんですけれど。まあでもトランスフォームしちゃった人なのかもしれないですけどね、変態って。

トランスフォームの象徴としての蝶々

でもあの、何だろう、うん。トランスフォーメーションって僕の中ではすごい重要で。何だっけ、例えば「物化する計算機自然」っていうのがTransformation of Material Things in Digital Natureって訳してるから。まあだいたいトランスフォーメーションなんですよね、僕の作品。風景のトランスフォームから、映像のトランスフォームから網膜のトランスフォームから、すべてトランスフォームなんですよ。なんでトランスフォームかって言うと、僕はあの、マルチメディアがコンピューターで扱えるようになったことがネイティブなコンピューター世代なんで、つまり何て言ったらいいかな…。生まれた時から、いや、物心ついた時から、インターネットがあってコンピューターでマルチメディアを扱って、映像と音楽が扱って、CGとかデータグラフィクスとか扱えて、つまりコンピューターっていうのは As a Digital Clayってよく言ってるんですけれど。Computer as a Digital Clay、デジタル粘土としてのコンピューター、で、トランスフォーム可能な装置、トランスフォーマブルマシン、トランスフォーメーションオブシングス、で何だっけ、あとモーフィングコンピューター。そういったような考えからいうと僕の中でトランスフォーメーションがメディアアートの中心なのはまあわからなくはない、と。

だから蝶々がよく出てくるんですけど。そこまで気づいて蝶々を見てる人はあんま少ないですけどね。蛹(さなぎ)があってトランスフォームするから、蝶々って。仏教でも変態・変換の証だし、ヨーロッパでも変換の証ですよね。だって芋虫が蝶々になるんだぜ!トランスフォーメーションじゃん!っていうのがまあ俺の中ではすごくテーマなんですけど。

「変態」の持つ2つの意味

で、本(『働き方5.0』)の中での変態って言うのはちょっと違った意味合いで。何かね、「偏屈な執着がある人」っていうテーマでございますね。天才建築家とか建築士の変態。天才はね、良い感じにつま先が地面から浮いてるんですけど、はい。「こいつ天才だなー」って思う人もたまにいるんで、ああすげえなあって思うんだけど。でも何かね、偏屈な愛情を持っている――なんか切れないナイフで研ぎ続けるようなタイプの方がやっぱり社会から天才と呼ばれていることの方が多いですね、はい。天才ね、こだわりがないんで本当に天才なんですよ、だいたい。あの、なんか「天才でかつ努力した」って言われている人はだいたい天才じゃないですね。けっこうね、重要です。これ、あんまり多分他の人は分からないかもしれないですけど。あの「天才でかつ努力したんです」って言われてる人はだいたい天才じゃないんですよ。で、めっちゃ天才みたいなやつはいるんですけど、その天才は本当に天才なんで、あんまり皆わかんないんですよね、なんかね。「えっ、どっからお前それ出てきたの?なんでなの?」みたいな。で、すげえ説明を求めてもちょっとよく分からないみたいなことがいっぱいあって。確かに、業界の人に言えば確かにそいつは天才だって話になるんだけど、その天才が成功してたり有名になって世間的に天才って呼ばれてるかと言われたら、だいたい呼ばれてないんですよね。で、これが世の天才ってやつで。でまあだいたい建築好きの変態ってやつが世の中で呼ばれてるんですけど。これは大きな違いがありまして。たぶん世の中のあんまり天才っぽい人に会わない人はあんまりわかんないかもしれないですけど、そこ結構重要でございます、と。

で、まあ「変態」自体は重要なキーワードなんですけど。別に天才も変態もどっちでもいいなと個人的には思ってるんですけど。変態の方がまあ生命力強いですね、だいたいね。まあいわゆる「オタク」っていうことにも繋がるんですけど、好きで好きでしょうがない人の方が、なんか生まれ持ってて、とか、ひらめきが半端なかった人より、なんかパッションがあるな、って思うんですけど。うん、パッションがあるなっていう人の方が惹かれるんですけど。やっぱなんかソツなく天才的なことをしちゃう人はしちゃう人で僕はすごく好きなんで、まあ何とも言えないですね。まぁちなみに、学生たちにも変態であったらいいな、ということはよく話したりとか、多くの社会人もそうあってほしいなと何か思うんですけど。

変態を極めるために必要なことは?

まあ変態に極めるために必要なこと、ね。まあとりあえず何かに没入してることじゃないですか?あと「何を言ってもコイツ○○の話をしてる」とか。養老さんにいつ話しても虫の話をしている、とかねそういうのあるじゃないですか、何か、何だろ。「○○さんにいつ話してもカメラの話しかしない」とかね、そういうのいっぱいあるんですけど。まあ僕はそうですね、何を話されてもコンピューターかカメラか、何かマルチメディアで返すのが多いですね、解像度とか触覚とか、何かディスプレイとか、あと何だろう、キャプチャーカメラ、コンピューテーショナルフォトグラフィー…わかんないですけど。何か僕の場合はマルチメディア語で全部返しちゃうんで、僕の中ではたぶんマルチメディアっていうのが一つの変態性なんだと思うんですけどね。解像度だったり質感だったりまあマルチメディア、メディアアートまあそりゃそうだよね。

墓に2文字書くなら――変態?物化?自然?

まあ変態を極めるためにはね、それをとことん愛すっていうのが一番重要なことなんでございますけれども、そういったことをねひたすらずっと考えると。何か、何だろう……「墓に2文字しか書けない」としたら俺は「変態」って書く。…いや書かないかなー(笑)。どうだろう「物化」って書いてありそうですね、トランスフォーメーションだったらね。墓に2文字書く言葉を選べと言われたら、「自然」って書いてあるかもしれないですね、「デジタルネイチャー」。分かんないですけどね、まだまだ決められない、と。とりあえず「双生」は書いてなさそうだな、この間の音楽会の。un-synchronized orchestra、創生する音楽会か。あれは書いてありそうでなさそうだな。そういったようなキーワードの中で「変態」って言うのは少なくとも含まれるな、とは思います。なので皆さん、トランスフォーメーションという言葉を見たらぜひ僕のことを思い出してみてください。

まとめ

アートの中でね、トランスフォーメーションとか物化とかすごい重要なんで。僕の中で重要なキーワードであって。じゃあなんでマルチメディアが物化やトランスフォーメーションに繋がるんだっていったらね、マルチメディアって音とか光とかを等価にして変換する時間と空間の芸術ですから。ジョン・ケージだって皆そうやって生きてきたわけなんで。この前、小林武史(音楽プロデューサー)さんと話してたらあれなんですよ、「音楽って浮遊感だ」と。まあ確かに音楽って空間に接続されている感覚だから、時間と空間を越えた浮遊感とか漂っていくとか大切だよねと思っているところです。そんなような感覚のトランスフォーメーションを大切に生きている落合でございました。

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